3ヶ月ほど前、入院先の病院から退院となり、97歳のYさんが入所されました。
うっ血性心不全で2ヶ月ほど入院されていたようで、入院中、利尿剤による加療、酸素化不良にて酸素送気により一時はSPO2(血中酸素濃度)、浮腫(むくみ)の改善もみられましたが、その後発熱や全身状態の悪化みられ、モニター管理となっていたようです。
リウマチ性多発筋痛症の疑いもあり、プレドニン10mg内服開始したところ、やや活気改善し、柔らかいパンや捕食のアイス、ジュースを介助により摂取できる状態まで改善。
しかしその後また食事摂取量の低下、活気の低下みられ、退院(入所)の3日前からは食事も摂れず、薬も飲めない状態で、点滴対応となっていましたが退院となり、我が施設に入所されました。
Yさんの診療情報提供書を見て一番驚いたのは、現在の処方一覧です。
1.プレドニゾロン錠(ステロイド薬) 抗炎症作用、免疫系を抑える薬
2.フロセミド錠 利尿薬
3.酸化マグネシウム錠 便秘薬
4.ニセルゴリン錠 脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下の改善薬
5.エゼチミブ錠 コレステロール吸収抑制薬
6.ランソプラゾールOD錠 胃薬
9.アムロジピンOD錠 高血圧治療薬
10.フェブリク錠 高尿酸血症治療薬
11.ツロプテロールテープ 気管支拡張テープ
13.ロキソプロフェンNaテープ 経皮吸収型鎮痛消炎テープ
14.プレガバリンOD錠 神経障害性疼痛薬
15.ノイロトロピン錠 神経痛治療薬痛
16.セレコキシブ錠 非ステロイド性消炎・鎮痛薬
97歳のおばあちゃんに、これだけのお薬が本当に必要なのでしょうか……💦
最近は、様々な持病により食事が摂れていない状況で入所されるかたが多く見受けられますが、その中でもかなり状態の良くないYさんに対し、栄養面でできることは「できるだけ苦痛なく、Yさんが食べたい物を召し上がっていただく」ということくらいでした。
ご家族も、いつどうなっても…という覚悟でいらっしゃる様子でした。
それでも、入所初日はペースト状の食事を7割ほど摂取でき、水分もカルピスウォーターを200ccほど飲むことができましたが、血圧が低く入浴は中止となりました。
その後3日間くらいは、朝食は何とか7割程度摂取されていましたが、昼、夕はほとんど召し上がれず…
5日目になると無呼吸状態が見られたり、SPO2が測定不可となってしまい、酸素投与開始。
お食事はムースを1皿召し上がるのがやっとで、点滴の日々…服薬の拒否もあり、大量のお薬はこの時点で中止となりました。
7日目にはチアノーゼ(血液中の酸素不足が原因で、皮膚や粘膜が青紫色に変色すること)も見られ、その後もSPO2は80%前半という状況が数日続きました。
それでも何とかムースを数口と、水分を50〜100cc位は経口から摂られ、あとは点滴を入れながら…最低限の水分は投与されていました。
「つらい…」
という言葉が聞かれることもあり、こんな状況が一体いつまで続くのだろう…と思う日々でした。
しかし、20日目頃からはSPO2も安定してきたため、酸素投与は中止となりました。
その頃からでしょうか…
「水をちょうだい」
という言葉が聞かれるようになり、少しずつ経口からの水分摂取、食事量も増えてきました。
あの苦しそうだったのが嘘のように、表情もしっかりされ
「りんごが食べたい」
とおっしゃることも…
そして、2ヶ月を過ぎる頃には、ご自分で食事が摂れるようにまでなりました。
その後みるみる体調の回復が見られ、ペースト状にしたお食事から粥食にレベルアップしましたが、ご本人より
「私はおにぎりが食べたいんだ」
と…
幸い義歯もあり、咀嚼や嚥下には特に問題ないとの判断で、見守りの上おにぎりの提供が開始されました。
入所から3ヶ月が過ぎ…
今ではあれが食べたい、これが食べたい、と食欲旺盛で、栄養状態も改善傾向が見られています。
何がここまでYさんを回復に向かわせたのか…
わずかでも経口からの食事、水分の供給が途切れなかったことが良かったのでしょうか…
超多剤併用と言わざるを得ない、多量の服薬が中止となったことが功を奏したとも考えられます。
Yさんのように「りんごが食べたい」というような、食べたい欲求が見られるかたに関しては、回復の見込みが見られることが多いように思います。
「食べることは、生きること」
「食べたい欲求は、生きたい欲求」
なのかもしれません。
すっかりお元気になられたYさんから「生きる力」を見せていただきました🌟
最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀